カテゴリー:お知らせ
2022.04.11
4月の一粒万倍日
2日(土)、5日(火)、8日(金)、20日(水)、29日(金)
★一粒万倍グラノーラ神戸元町本店では、店舗でお使いいただけるポイントカードを
お作りしています。「一粒万倍日」はポイント2倍!ぜひご利用ください。
※神戸元町本店でのみ、ご利用できます。
※一部店舗休業日もございます。
2022.03.25
イタリア・ミラノから「くいしんぼうのイタリア食ノート」が届きました!
食をより深く研究するために、現在イタリア・ミラノへと単身渡っている一粒万倍グラノーラのオーナー・板垣 香織。
月に2回ほどのペースでイタリアからの情報をお届けしています。
その名も「くいしんぼうのイタリア食ノート」。板垣が感じるイタリアをどうぞお楽しみください!
【くいしんぼうのイタリア食ノート Vo.2】
わたしは“カプーチョ・シニョーラ”と呼ばれているに違いない。
どこの国に行っても、行きつけの店を作るのが大好きだ。「ミラノでいきつけのバーがあるのよねー。」と言えたらちょっと格好がつくのだけれど、見かけによらずお酒が強くないので、通うのはもっぱらカフェや小さなレストラン。もちろん、ミラノでも行きつけのバール(イタリアではカフェをバールと呼ぶ)がある。スーパーの片隅にある小さなバール。夕方になると、近所のおじさんたちがお酒を飲みながらおしゃべりに花をさかせていたり、高校生が大人ぶってタバコをふかしながらマフィンを食べたりする場所だ。一日の終わりを楽しく過ごそうと集まっているイタリアの人たちの間で、ひとりゆっくりカプチーノを飲みながらその風景を楽しむのが大好きだ。未だ名前も覚えていないそのバールで「カプーチョ、カカオ?」と顔なじみのおじさんが、毎回笑顔で出迎えてくれる。「シー、グラッチェ!」とわたし。そう、わたしは決まってカカオのかかったカプチーノをオーダーするのだ。
ミラノに着いたばかりの頃、コーヒーを飲みたくなったわたしが初めて行ったバールも同じ場所。イタリア語で書いてあるコーヒーの注文の仕方がわからず、とりあえず「カフェ、プリーズ」と英語で伝えてみたのだ。「?!?」と怪訝そうな顔でしばらく考えた後にカウンターにドン!と不機嫌な顔で置かれたのが一杯のエスプレッソ。前情報でイタリア人男性はみんな優しいと聞いていた私は、そのおじさんの態度と目の前にある小さなカップに入っているエスプレッソにガッカリしたのは無理もない。そのあともいくつかバールに行ったけれど、どこもエスプレッソばかり。小さなカップのエスプレッソを立ったままひと口で飲み干し、立ち去るイタリア人を見て絶望的な気持ちになった。もうミラノには日本のような美味しいコーヒーをゆっくり飲める場所はないんだ・・・。そこで、思いついたのが少しでも量の多いカプチーノ。ミルクは入っているが量が多い。机に座って飲むにはちょうど良かったのだ。それ以来、決まって頼むのはカプチーノになった。
しばらくして、イタリアに長く住んでいる友人とバールに行く機会ができたので、イタリアのコーヒーについてのうっぷんを晴らそうと、一気に不満をぶちまけてみた。「どうしてイタリアにはコーヒーが3種類しかないの?」「エスプレッソとカプチーノとお湯で薄めたアメリカーノしかないじゃん!」と言ったわたしを怪訝そうな顔で見つめる友人・・。「え・・・。日本より沢山種類があるよ・・。」その時の彼女の眼はあのときのカフェのおじさんと同じだった。
わたしは数年前に北京のカフェメニュー開発に携わったこともあり、今まで沢山のコーヒーを飲んできた。アメリカのポートランドでカッピングをしたり、バリでコピルアクを飲んだり、北京でもゲイシャの飲み比べをしたり、スターバックスでラテ講習にも参加した。しかーし!イタリアンコーヒーについては全く知らなかったのだ。メニューに書いてあるイタリア語のコーヒーの中でかろうじて読めたのがエスプレッソとカプチーノ、アメリカーノだけだったので、それ以外はないと思っていたのだった。最悪だ・・・。穴があったら入りたい・・・。そんな気持ちを察してか、その友達はそのあと優しくコーヒーについてレクチャーしてくれた。
イタリア人にとってコーヒーはエスプレッソ、カフェとも言う。そのエスプレッソを基本に20種類以上の飲み方がある。代表的なものがルンゴ(エスプレッソ+少しのお湯)、リストレット(エスプレッソの半分の水で抽出)、ドッピオ(エスプレッソダブル)、コレット(エスプレッソ+グラッパ)、カフェ・マキアート(エスプレッソ+ミルク)、ラテ・マキアート(ミルク+エスプレッソ)、マロッキーノ(エスプレッソ+泡立てたミルク+カカオ+チョコレート)、カフェ・アメリカーノ、カフェ・コンパンナ(ウインナーコーヒー)、シェケラート(エスプレッソ+砂糖+氷でシェイクしたもの)、カプチーノなどなど。そしてさらに微妙なオーダーができる。例えば、カフェ・アメリカーノのお湯は割らずにカップに入れたものを添えて欲しいとか、割るものもお湯と水を選べたり、カプチーノもミルクの量によって呼び方が違ったり、とにかく注文が様々なのだ。近年主流になっているサードウェーブコーヒーの、豆の産地に対するこだわりや、ハンドドリップの技術を競い合う日本の文化とは全く違って、とにかく基本のエスプレッソをどう楽しむか、それがイタリアのコーヒー文化。もしかしたら、日本の焼酎の飲み方に近いのかもしれない。
そんなイタリア人はコーヒーを飲むタイミングにもこだわっている。イタリア人はミルクの入っているものは11時以降には飲まないというもの。彼らにその理由を聞いても定かではなく、とにかくそういう習慣になっているというのだ。
わたしが常連になっているつもりで喜んでいたバール。本当は夕方にミルク入りのカプチーノをオーダーする変なアジア人女性として覚えられていたのだった。それがわかった今でも、わたしの習慣は変わらない。今日もカカオのかかったカプチーノを夕暮れのバールでゆっくり飲むのだ。近頃は、そこに集まる人たちとも顔見知りになってきた。毎回、立ち止まってウインクをしてくれるおじいちゃん。いつも見かけるボーダーコリーや、高校生たち。バールのおじさんも「カプチーノ美味しいかい?」と声をかけてくれるようになった。言葉は通じないけれど、その場所にいつもいる人たちの顔をみるだけでほっとできる。心の中で「わたしも今日、一日が終わりました!」とみんなに伝えているような気持ちになるのだ。日本にいるときにはなかった新しい習慣ができること、それも海外に暮らす醍醐味だ。
【筆者】板垣香織(Kaori Itagaki)
東京と神戸を拠点として活動中。建築家。デザイナー。
イートリートフード&デザイン代表。一粒万倍グラノーラ運営。
k2-foundation architect and design主宰。
米コロンビア大学東アジア研究所/建築・都市計画学科へ客員研究員として留学中に
アメリカの食文化に触発され「意(意匠)・食・住」を考える活動をスタート。
建築設計・デザイン、アート&フードディレクション、企業への商品企画などを行っている。
2021年より、イタリア・ミラノにあるミラノ工科大のデザインスクールにて、
「Design for Food」という分野で、新しい学問としての”食”をより深く研究している。